飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。

Episode 17 シリウス総合法務事務所 代表|寺内正樹さん

宇宙ビジネスの夢を形にする法律家

宇宙ビジネスは中小企業にもチャンスがある
── 法律がご専門でいらっしゃいますが、どのようなお仕事か教えてください。
私の仕事は、社会保険労務士と行政書士です。その中で私が一番得意としているのは、起業支援です。これから会社を起こしたいという方の会社を設立したり、会社を作るとだんだんお金が必要になってくるので助成金を申請するお手伝いをしたり、人を雇うようになると社会保険に入る手続きをしたり、人材が増えてくると今度は就業規則という会社のルールを作るなど、その1人から始めた会社を、お客さんとともに成長させていくのが私の仕事です。

── 宇宙に関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
小さい時から宇宙は好きでした。小学生の頃、授業で星のことを習ったのが、ちょうどハレー彗星が地球に最接近する時で、双眼鏡を買ってきて見ました。ちゃんと彗星が見えたのか見えてないのか微妙な感じでしたけれども、自分の中では見えたような気がしていました。それから先は、高校から文系に行き、宇宙から離れて法律の道に進みました。
そのうち、あるところから宇宙飛行士の講演があるから聞いてみないかと、セミナーに誘われたのです。宇宙飛行士に会えるかもしれないと思うと、宇宙への関心がぐっと戻ってきたように感じました。そこで山崎大地さんのお話を聞き、衝撃的だったのは、宇宙というのは、ロケットを作って飛ばすという関わり方だけではなく、普通の中小企業のビジネスとして関わっていけるものだということです。当時、宇宙ビジネスはお金がかかり、普通の人が関われる世界ではないと思っていました。ところが「私たちはハードを提供するのではなく、ソフトを提供するんです」という山崎さんの言葉で、それが思い込みだと初めてわかったんです。

もう一つ、山崎さんのお話で驚いたのは、「仕事として宇宙に行きましょう」という発想でした。民間人も普通にロケットに乗れるようになり、宇宙に行くのが当たり前になったら、そこで何をするのかが大事になる、と。自分は宇宙は遠すぎると感じ、そこで考えが終わっていたことに気づかされたのです。宇宙で何をしようかと考え始めるとアイデアがどんどん出てくるんですよね。宇宙で結婚式を挙げる、生前葬を行う、イベントやコンサートを開く……。宇宙でそういったビジネスをするというのは、これまでは夢でしたが、もうかなり現実的になっています。
宇宙社労士、宇宙行政書士として、起業を支援したい
── 宇宙を近くに感じられるようになって、どのように関わろうと思われたのですか?
まず皆さんは、宇宙ビジネスは遠すぎて、お金がかかりすぎると思っているんです。そこで、「ハードでなくてソフトを提供するんです」とお話しすると、「確かに、そうすると中小企業と関わりますよね」と考え方が変わるんです。ではどのように事業を始めるのか、というのが次の段階です。起業支援をしている専門家はたくさんいますが、宇宙のことを知った上で起業支援をしている方はほとんどいません。そこで、自分がその分野を作ればいいんだと気がつきました。
今、宇宙は起業のネタから完全に外れています。そうではなく、今までやってきたことを宇宙で展開したらどうなるのか、会社の中で宇宙事業部を作って、その会社の事業を宇宙に展開していったらどうなるか、といった新たな発想を提案すると、興味を持ってもらえます。
まだ始めたばかりですが、日本初の宇宙社労士、宇宙行政書士になろうと思っています。会社を起ち上げてそれをちゃんとお金が稼げる状態に持っていくことは、なかなか難しいことです。しかしそこは私が今まで15年以上やってきたところなので、そのお手伝いはできると思っています。

── 実際に宇宙ビジネスの起業事例はありますか?
今はまだご相談ぐらいです。顧問先様に最近うちこういうサービスの提供も始めたのでどうですか、とお話して興味を持っていただいているところです。来年になって本当に宇宙に飛び出す人が出てきた時に、あの人の言っていたことは嘘じゃなかったと、ガラッと変わるかもしれません。それまでは、宇宙社労士、宇宙行政書士と名乗って起業支援をしている男がいるんだということを知ってもらおうと思っています。
日本の宇宙ビジネスのベンチャー企業は、新聞報道によると、まだ20社ぐらいだそうです。一方、世界の宇宙ビジネスの会社は約1000社。これから宇宙に皆が飛び出す時代になった時に、日本がそこに加われなくて弱くなるのはすごく悲しいことです。宇宙ビジネス分野に絞った起業支援は私しかできないと思うので、それによって日本の宇宙ビジネスを強くしていきたいという希望を持っています。


宇宙に行かなくても、宇宙ビジネスはできる
── 宇宙ビジネスに関して、法律面は整備されているのでしょうか?
法律面は、とくに日本ではほとんど整備が進んでいません。海外事情も詳しく知っているわけではありませんが、少なくともビジネスの状態は、その分野の進み具合を示しています。日本でまだ宇宙ベンチャーが20社しかないけれども、海外で1000社あるなら、法律はまだできていなくても、検討自体は始まっているのではないでしょうか。そういう意味では、日本は後れを取ってしまう可能性があり、スピードも大事かなと思います。

── 今後はどのように宇宙ビジネスの支援を行っていかれるのでしょうか?
まず宇宙ビジネスに興味を持っていただいて、宇宙ビジネスをテーマに起業できる会社をどんどん増やしていきたいですね。実際宇宙に飛び立つのがまだ先であっても、商売できないのかというとそうではありません。生前葬など葬儀業界などは、宇宙葬という方法もあります、近い将来できます、と理解や期待感を高めています。ビジネスでは、商品ができてからお客さんを獲るということももちろん大事ですが、iPhoneがよい例で、まだ製品が完成していなくても売ってしまうことができるんです。それが嘘になったらもちろんまずいのですが、完全にできあがる見込みで売るなら問題はなく、それもひとつの売り方です。
夢を持って宇宙を追いかけて行っても、収入にならないと事業としては継続していきません。私の仕事は、事業の収益性と安定性をちゃんと確保し、このラインだったら宇宙ビジネスはできます、というアドバイスができると思うんです。夢を夢だけで終わらせないで、現実的に事業化する仕事をやってきているので、宇宙への関心を事業化して行けるよう、その受け皿になりたいと思っています。

プロフィール

寺内正樹(てらうち まさき)
シリウス総合法務事務所代表。社会保険労務士、行政書士。起業支援を得意とし、宇宙ビジネスの起業相談も行っている。ASTRAX月面シティのメンバーで、月面シティの第二代市長。
シリウス総合法務事務所
http://www.kaisha-teikan.com