飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。

宇宙という極限で、自分の心を見つめたい

10年越しの宇宙への思い


── 銀河ヒッチハイカーズは10年前にも一度立ち上げていらっしゃいますが、どんなきっかけだったのですか?
宇宙にはずっと行きたいと思い、自分の「やりたいことリスト」にも入れていました。たまたま民間にも無重力体験が開かれるというので応募し、体験したのが最初です。それから宇宙旅行を計画している会社の社長の話を聞いてその場で申込書にサインし、翌月には会社も辞めてアリゾナに飛び、福岡の国際宇宙会議で初めて山崎大地さんと出会いました。それまで僕にとって宇宙もバックパックの乗りで、エベレストのような行先のひとつにすぎませんでした。山崎さんから会社を作ったらと勧められ、銀河ヒッチハイカーズを設立しました。とくにやることは決まっていなくて、宇宙旅行に申し込んでいる、というだけだったんですけど。山崎さんも宇宙旅行に申し込んでいて、宇宙機をチャーターしてビジネスとしてもやる、というので一緒に動いていたのですが、僕はだめで一回会社をつぶすんです。一番の問題は、宇宙船が開発されなかったということです。
── それから再び銀河ヒッチハイカーズを設立されましたが。
そのあといろんな会社を立ち上げてはつぶし、30歳になって、そろそろやばいな、と思い今のメガネの会社を作りました。メガネが好きで300本ぐらいコレクションがあり、それを並べて売るところから始めて10年ぐらいになります。実は最初の会社をやめるとき、エベレストという世界の頂点に立ってからもう一回、銀河ヒッチハイカーズを復活させると皆に言っていたんです。なぜかというと、前は旅行に行った先でたまたま何かやるとか、主体的ではなかった。これじゃだめだと思い、復活させる時は主体的にやろうと決めていました。そのためにまず、小さい頃から口にしていたエベレスト登頂を果たそうと。35歳頃になって、大勢の前でエベレストに登ることと、海外にメガネの店舗を作ることを宣言しました。その2つを並行して進めて実現しました。

家族のために、絶対死なない約束をして冒険へ
── 会社を作るのも、エベレストに登るのも相当な決心がないとできることではありませんね。
新しい挑戦が好きなんです。未知への好奇心が強いし、バックパックも好きです。逆に言うと、レールに乗れないんです。学校や集団生活が大嫌いだったし。エベレスト登頂も、皆に言うと軽く聞こえるのですが、その時はすべてを捨てました。トレーニングもきつかったですが、家族の方が相当大変でしたね。今、8歳、6歳、4歳の娘がいて、3人目は山に行っていた時に生まれ、11月には4人目の長男が生まれました。海外や山へ行く時、子どもに「行かないで」と言われるのが一番つらかったです。寂しそうにされるのが応えますね。一度「行かないで」と言われて行かなかった時があるのですが、奥さんに怒られました。「行かないで、と言われてやめるぐらいの甘い気持ちだったら最初から行くな」「どれだけ家庭を守っていると思っているんだ」と。
── 奥様はどんな方ですか?
強い人です。30歳ぐらいの時、雪山でセルフディスカバリーという自己発見のプログラムに参加して出会いました。ただ僕がエベレストや宇宙に行くと言っていたのは、あまり本気にしていなかったみたいです。僕が海外や山に出かけていた頃は、「応援したいけど、応援できない自分がいる」と言っていました。「本当は応援したいけど、いろんなことを考えると、なかなか応援できない」と。子どもが4人もいて、ひとりで面倒を見るのは、かなりストレスに感じていたようです。危険なところに行って、僕が子ども4人残して死んじゃったら、ということは心配しているようです。だから、絶対死なないという約束の下に出かけていました。
前人未到のオリンポス山登頂へ向けて
── エベレスト登頂を果たして、晴れて火星に宇宙旅行ができますね。

まだ宇宙船も飛んでおらず、この10年という期間はちょうどよかったかもしれません。ただ、今は家族と過ごす時間。僕が火星に行くのは奥さんとの約束で、子どもたちが全員成人してから、ということになっています。そうすると20年後。お父さんが死んだ、というのが理解できる年齢が二十歳ぐらいだからということです。火星に行くときは片道切符です。それまでに技術が発達して帰ってこれるようになったら、行っても構わないかもしれませんが、基本的に宇宙は死を覚悟して行くところです。山に登り続けていると3分の1ぐらいの人が死んでいくそうです。山に登っている方はだいたい3分の1ぐらい友人が亡くなっていると言います。そのぐらい好きだから山に行くわけです。宇宙も同じです。それに、火星に行くには気持ちに火がつくのが一番大事なので、今はその時が来るのをじっと待っている感じです。
── 宇宙ではどんな体験を期待しますか?
エベレストに登ってからほかの山に行っても何か違うんです。わくわくはしますが、エベレストの延長線上でしかなく、全く違う挑戦をしたいと思っています。僕の今までの人生で、自分の中でエネルギーの源となっている体験が2つあります。1つ目は、バックパックで訪れたインド。お寺に泊まった時、奈落の底に引き込まれるような恐怖体験をしました。その時、自分の心を強くしようと思いました。2つ目はモロッコの砂漠での体験。月の美しい夜、何も聞こえず、じっと動かなければ自分というものがなくなっていくような感覚を覚えました。エベレスト登頂も、追い込まれれば追い込まれるほど、自分の本当の心が見えてくる体験でした。宇宙でも、地球から離れた空間で、心の持ち方が変わるような、見たことのない世界を見てみたいと思います。火星にはNASAか誰かが先に行くでしょう。でも火星のオリンポス山は一番乗りしたいですね。
プロフィール

星野 誠(ほしの・まこと)
1978年生まれ。株式会社誠、株式会社銀河ヒッチハイカーズ代表。太陽系の最高峰、火星オリンポス山への挑戦を宣言している。これまで全くの素人から、エベレスト登頂と世界7大陸最高峰登頂を果たす。また銀座、新宿で誠眼鏡店を経営。1男3女のパパ。(2018年11月第4子誕生)