宇宙ビジネスに必要な“人”を育成するアストラックス・アカデミー

将来、急速に成長する可能性のある民間の宇宙事業。そこで必要になるのは、マーケティングを踏まえたサービスと人材です。その育成を担うために2017年、ASTRAX ACADEMY(アストラックス・アカデミー)が設立されました。現在、設けられているのは民間ビジネスコースを始め8コース。実際にどのような教育が行われているのでしょうか。代表の岩崎恵一さんにお話を伺いました。


学びながら事業を作る、民間宇宙ビジネスコース

── 昨年から講座を開始されましたが手ごたえはいかがですか?
民間で宇宙事業を始めようといっても、まだ世間の認知は低いのが現状です。いずれは世の中が追いついてくるでしょう。今は啓蒙しながら、自分たちの教育事業に対する情熱を広めている段階です。
アカデミーで私たちが用意しているコースは8つあります。そのうち「民間宇宙ビジネスコース」「民間宇宙飛行士養成コース」「宇宙旅行者準備コース」「ASTRAX ACADEMY 講師養成コース」の4つがすでに稼働しています。

── 「民間宇宙ビジネスコース」の内容を教えてください。
企業の経営者を対象に、山崎大地さんを講師として実施しています。受講者は学びながら事業を作っていきます。ゼロから宇宙ビジネスを起ち上げるのではなく、受講者が日常的に行っているサービスに宇宙を加え、事業化するためにマーケットを作っていくものです。たとえば商業を目的とした宇宙船の活用や、宇宙インフラにつながるもの、海外企業との宇宙事業の実績作り、などを組み込んでいきます。今、事業としてできあがっているのは、宇宙葬儀と宇宙クルーズです。宇宙クルーズは、船の小型船舶免許を持っている受講者が、クルーザーを使って非日常的な環境を楽しむイベントから、実際に無重力のトレーニングの体験そして宇宙旅行までを、丸ごと宇宙クルーズとして提供する宇宙ビジネスです。
そのほかには、教育関連の事業をしている受講者が、その宇宙版として、子ども向けのイベントをミックスしながら事業作りを始めているところです。

── たんなる先行投資ではなく、実際のビジネスとして起ち上げているということですか?
大前提として、講座の中で作る事業が、ちゃんとビジネスとして成り立つことを目指しています。受講料は必ずペイしてもらいたいですし、そのために必ずサポートしていきたいというのが山崎さんと私の夢でもあるのです。時間はかかるかもしれませんが、実際に収益を上げて、民間宇宙ビジネスとしてやっていけるよう、受講者の皆さんはがんばっています。
現時点では、民間宇宙ビジネスをやろうとするとやはり難しい面もあり、修了生にも継続的なフォローが必要です。受講者には何か一緒にイベントやりましょう、と背中を押すような声かけも意識してやっています。


宇宙旅行時代に必要な、顧客目線の3つのコース
── ほかのコースについても教えてください。
現在、民間宇宙ビジネスコース以外で、受講者がいて継続中のコースは次の3つです。
・「宇宙旅行者準備コース」
宇宙旅行は、飛行時間が6時間程度のツアーから数十分のものがありますが、それで終わりなんです。現時点では宇宙旅行には何千万もかかります。そのため、ただ飛んで終わるのではなく、準備段階から、どういう宇宙旅行にしたいのか、ヒアリングをかけながら目的を明確にしていきます。これから宇宙旅行に出かける人が、飛ぶまでのワクワク感を広げ、宇宙に出た時に期待していた体験ができるように準備をしていくのが、宇宙旅行者準備コースです。
・「ASTRAX ACADEMY 講師養成コース」
現在は、大手航空会社のフライトアテンダント出身で、エアラインコースの講師やマナー講師をしている方たちが、宇宙船を活用したフライトアテンダントを養成したいと受講しています。そのために、ASTRAXの中の知識、情報、技術と、エアラインスクール講師としての実績を掛け合わせて、新たなプログラムを作っているところです。その過程で、お披露目としてイベントを入れていきます。たとえば、事業を紹介しながら協力者を集める、宇宙船のフライトアテンダントのイベントも開きました。実際に稼働しながら講師を育てるコースです。
・「民間宇宙飛行士養成コース」
基本的な知識はもとより、商用目的の宇宙飛行に必要な知識情報を学びながら、お客様をアテンドする、今までとは異なる新たな宇宙飛行士を養成していきます。アカデミーの中で最も難易度が高いコースです。宇宙飛行士は世間から注目も浴びるため、強いメンタルやマインドも必要です。現在は山崎さんが唯一、民間宇宙飛行士として活躍していますが、それに続こうという受講生が学んでいます。
興味があったら、まず民間宇宙ビジネスのガイダンスへ

── 宇宙ビジネスに関心があり、とりあえず概要を知りたいという人は多いと思いますが。
アカデミーでは、90分の民間宇宙ビジネスのガイダンスを開催しています。そこでは世界の最新の宇宙情報を伝え、ASATRAXやASTRAX ACADEMYの内容をご紹介します。費用は1人1000円から3000円ぐらいです。
次のステップとしては、ガイダンスの内容をもっと深掘りする1日コースを用意しています。1日コースではさらに、参加者の行っているサービスや事業、経歴を伺ったうえで、ASTRAXのデータから過去の実績や海外の事例と照らし合わせ、参加者の事業に類似したものやマッチングできるものを見つけて、こんな宇宙サービスができるというデザインをします。
その後、事業化する方向が固まってきたら、7時間×7回の8つのコースのどこかに入っていくことになります。

── 海外でもこのアカデミーのようなコースはありますか?
海外にはありません。そこはチャンスかなと思います。ロケットや人工衛星、科学の開発は日本も海外も進めています。しかし、サービスや人材育成、身近なものという観点で宇宙ビジネスをやっているところはありません。私たちがプログラムをしっかり作れば、海外でも使えるようにしていけるのではないかと思っています。
目標は、ASTRAX ACADEMYのプログラムを海外で活用してもらい、海外の事業者たちが育ていくような関係を作っていくことです。それによってビジネスが盛んになり、新たな経済効果も生まれてくると思います。お客様に「ありがとう」と感謝され、サービスの対価として成立する民間の事業が世界に広まっていく、そういうプログラムを普及していきたいですね。

── 今後はどのようにアカデミーを展開していかれますか?
アカデミーの広報としてはSNSやWEBサイトを使い、声をかけていただいた経営者の集まりなどで、映像を見せながら、商業宇宙船が開発されていることなどをお話しています。
また講師養成コースの受講者たちが宇宙CAのイベントに向け、神奈川の某所に設置している宇宙船のシミュレーターの中で、プロモーションビデオを撮影、制作しました。実際に宇宙旅行に行く方たちに出演してもらい、フライトアテンダントがこんなサービスをしていきます、というものです。
アカデミーとしては、受講者の本業と宇宙事業の両方とも潤い、大きく事業成長していくことを理想としています。事業者の皆さんがそうやって事業を成長させていくところも楽しみです。私自身は黒子でいい。皆さんの活躍を裏で支え、いっしょに歩む側でいたいと思います。


プロフィール

岩崎恵一(いわさき・けいいち)
1977年生まれ。コック、携帯販売会社、保険営業などを経て、現在ASTRAX ACADEMY代表として宇宙を使ってビジネスをしたい人や宇宙に行きたい人など宇宙について学びたいという人たちのための学びの場を提供している。
http://astrax-academy.space/